· 

山本有三「路傍の石」

〇冒頭文“そのとき、吾一は学校から帰ったばかりだった” 

 

ある少年の成長、生き方を見せてくれる小説。戦前の文章であるが、とても読みやすく一気に読み進めることができる。次への展開運びが上手い。様々な人々と出会い、進む道の影響を受けていく主人公。次野先生、いなば家の主人、画家の黒田、など。子供の世界と大人の世界とでの地位の逆転。良い人も悪い人も次々と現れる。何度も吾一にエールを送ってしまう。人生を希望を持って生き抜くことを考えさせてくれる小説。

 

〇“吾一というのはね、われはひとりなり、われはこの世にひとりしかない、という意味だ”

〇“たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、ほんとうに生かさなかったら、人間、うまれてきたかいがないじゃないか”

〇“おっかさん、ずいぶん久しぶりだね、こうして、いっしょにたべるのは。おっかさんと向き合ってたべていたら、なんだか知らないが、むやみに涙が出てきて、涙が出てきて…”

〇“働くってのはね、はたをらくにしてやることさ。働くと、はたの人をらくにしてやると、自分もきっと、らくになるんだよ”